冬うらら2

 ぱふっと。

 メイは、彼の胸に顔を埋める。

 そうして、彼女もぎゅっと抱きしめてくれた。

 上着も着たままの、ちょっと抱きづらいカイトの身体を。

 背中に回る腕の感触に、胸を締め付けられる。

「よかった…」

 ぽつっと。

 メイは、胸の中でそう呟いた。

 よかった?

 車の話をしたら、きっと出てくるのは『ありがとう』だと予測していたカイトは、眉を顰める。

 どうして、ここで『よかった』が出てくるのか。

「起きたら、いなかったから…」

 ぎゅうっと、カイトを抱きしめる腕に力が込められる。

 顔は、胸にうずめたまま。

「……!」

 その言葉で、すべてを教えられる。

 彼が帰ってくる前に、メイはすでに起きていたのだ。

 そうして、ベッドに一人だったのである。

 だから。

 玄関まで飛び出してきたのだ。

 パジャマのままで。

 胸が、きゅうっとする。

 結果的に、彼女に不安な思いをさせたのだ。

 それが苦しかった。

 それと―― 心のどこかで、すごくメイが自分を欲してくれている、ということを教えられた気がして、また愛しさが募る。

 まだ。

 全然、二人とも。


 両思いにすら、慣れていなかったのだ。
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