冬うらら2

 夕食が、終わる。

 今、カイトはお風呂に入っている。

 メイは、ソファで。

 まだ、堂々巡りで詰まっていた。

 出迎えの時、ちゃんと顔が見られなかったが、それはカイトに怪訝に思われなかったようだ。

 すぐに、抱きしめられたせいかもしれないが。

 ぎゅっと抱きしめられると、お互いの顔は見られずに済むので。

 その『ぎゅ』は、いつもと違って、ちょっと胸が痛かった。

 心がではなく、物理的に胸が痛かったのだ。

「抱きしめられても痛いなんて…」

 パジャマ姿なのでブラはしていないが、オトメ・デーのせいで胸が張っているのだ。

 そのせいで、彼の胸に押しつけられたのが痛かったのである。

 こんなことも、カイトに伝えられるはずもなかったし、ちょっと痛いくらいでぎゅーがなくなるのもイヤだった。

 早く終わってくれることを、祈るしかないのだが。

 当座の問題は、今夜だ。

 ふわぁ。

 シリアスに悩んでいるつもりなのに、身体はそれを許してくれない。

 また、あくびがこぼれ落ちた。

 どう…しよ……う。

 ぼやっと霞がかかったのは。

 メイの視界にか。


 それとも―― 意識にか。

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