冬うらら2

 身体が熱くなって、カイトはばしゃんとフロから抜け出した。

 余計なことを考えてしまったために、すっかり長風呂をしてしまったようだ。

 といっても、彼にとっての長風呂であって、一般のタイムではなかったが。

 クソッ。

 記憶の中の彼女をこねまわすよりも、この空間さえ出てしまえば、現物がそこにいるのである。

 平日に共有できる少ない時間を、カイトは無駄にできなかった。

 ただ、カイトにとって幸いなのは、明日は土曜日で。

 会社は、対外的には休日だった。

 しかし、開発の連中が出勤するのは間違いない。

 カイトは。

 自宅勤務だった。

 それを告げた時、先週は反応を返さなかったチーフが、にこりと笑ったのがムカついていた。

 朝っぱらからの不愉快な事件さえなければ、きっとそんな笑いはできなかっただろうに。

 仕事を、こなしゃいいだろうが!

 それさえしていれば、理由は会社には関係ないはずなのだ。

 ガシガシとバスタオルで頭を拭きながら、今度のカイトは思い出し怒りだった。

 ただ、まあ。

 そんな彼の感情さえヌキにすれば、一応休みという形にはなったのである。

 喜ばしいことだ。

 そのために、毎日遅くまで頑張った、というのもあったのだが。

 今日の会社云々のことはすべて忘れようと、パジャマのボタンも適当にとめた状態で、カイトは脱衣所から出た。

 思い出し怒りのまま再会して、彼女に変な勘ぐりをされたくなかった。

 が。

 その心配はなかった。

「…?」

 戻った部屋が変に静かだったので、一瞬不安が胸をよぎった。

 しかし、黒髪がソファの背に預けられているのを見つけて、そっちに近づくと。

 すぅーっと。

 穏やかな寝息を立てて、メイは眠っていた。

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