冬うらら2

「あ、あのっ…ごめんなさい」

 カイトが、無言で悩み続けていたために、彼女の方がその沈黙に耐えきれなくなったように口火を切る。

 クソッ!

「謝んな! 怒っちゃいねぇ」

 そうなのだ。

 心ではなくちゃんと言葉で言えていたら、メイがわざわざ謝る必要などなかったのに。

 役立たずな自分の口を呪いながら、カイトはまっすぐに彼女を見た。

「ど、どうしようか一生懸命考えてたの…さっきまでずっと。でも、こういうことはちゃんと言わないといけないような気がして…あの…あっと…」

 わたわたと。

 彼女の方もスムースに口が動かないようで、とぎれとぎれに言葉をつなぐ。

 しかしその言葉に、カイトの耳と目は釘付けになった。

 まるで、これから何か重大なお知らせがあります、と言う風ではないか。

 一緒に風呂に入れない理由が、そんな重大なお知らせだとは思わなかった。

 何だ?

 一気に、不安でいっぱいになる。

 風呂を同じにするということは、好きとかそういう気持ちに関わることだ。

 それが出来ないということは、やっぱり好きとかそういう気持ちに関わることなのだろうか。

 一緒に風呂に入る=好き

 一緒に風呂に入らない=***

 んなワケねぇ!!!

 ***のところを、カイトは一文字も考えなかった。

 なのに、何のことを指しているかは本能で分かっていたので、その気配すらも振り払う。

 そうして、もう一度しっかりと彼女を見た。

 聞いてやる、と真正面からこれから出てくる言葉を、受け止めようとしたのである。

 メイの口から、どんなショッキングな事実が出てきたとしても、それがカイトを苦しめることとなったとしても、全部彼女のことなのだ。

 しっかりと受け止める甲斐性を、自分に持たせようとした。
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