冬うらら2

 湯船の中で、極力彼女は何も考えないようにした。

 そうでないと、端から不安が押し寄せてくるのだ。

 今頃、カイトはどう思っているだろう、とか。

 お湯は温かくて、オトメ・デー特有の張りつめた身体をほぐそうとしてくれているのに、これから出ていくことを考えると、別の緊張がメイを取り巻いた。

 ただ一つ分かっているのは。

 今夜は間違いなく、清らかな夜ということである。

 メイもそれを望んだし、変なタイミングでカイトにストップをかけずに済んだはずだ。

 最悪の気まずい雰囲気は、避けられたはずだった。

 しかし、やっぱり気が重い。

 ベッドで、ぎゅっと抱きしめてくれないような気がしたのだ。

 こんな状態なのだから仕方ないと自分でも分かっているのに、わがままな自分が現れて、彼女を困らせようとするのである。

 我慢させようとしても、すっかりカイトの腕の中にいるのが当たり前のようになってきた生活のせいで、今更何も接触ナシで眠るということを、受け入れたがらないのである。

 あと、何日かじゃない。

 そう言い聞かせはしたけれども、成功はしなかった。

 そんな風だったので。

 お風呂から上がり、パジャマに着替えて部屋に戻った時には、すっかり気落ちしてしまっていた。

 身体が、彼女をこんなにも、ブルーにさせてしまっているのだろうか。

 部屋は。

 一瞬、カイトがどこにいるのか分からなかった。

 最初はソファを見たけれども、そっちに姿はない。

 次はコンピュータの方―― いない。

 その後でベッドを見た時、そこに彼がいるのが布団の輪郭で分かった。

 もう寝てしまったのだ。

 しゅーん。

 メイは、更に気落ちする。

 昨日は彼女が先に寝てしまったのだから、お互い様と言えばそうなのだが。

 さっきの話からの延長で考えると、はぁとため息が出てしまう。
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