冬うらら2

「あっ……!」

 なのに。

 横から近づいた力が、メイをぐっと引き寄せる。

 吐息が、かかった。

 それくらい、彼が側にいるのが分かる。

 え? え? え???

 完全にないと思っていた事態だけに、彼女は硬直した。

 そしてパニックになった。

 まさか、あの言葉はちゃんと伝わらなかったのだろうか、と。

 そんなハズはない。

 彼は、メイがイヤがることは、何もしない人だというのに。

 自分の反論通り、それ以上は何もなかった。

 そうなのだ。

 カイトは、ただぎゅっと抱きしめてくれているだけなのである。

 嬉しい。

 身体じゃなくて、心をいま抱きしめてくれているような気がした。

 真っ直ぐで力強い、彼の気持ちを感じる。

 あんな言葉くらいでは、何も揺らがないのだと、この腕が教えてくれるのだ。

 すごく幸せで、どうしたらいいのか分からなくなりそうだった。

 その気持ちをいっぱいに押し込めて、彼女もぎゅっと抱きしめる。

 すると、カイトがビクッとしたのが分かった。

「大好き…」

 その腕に、小さく言うと。

 また、彼がビクッとする。

 どうかしたのかと顔をあげようとしたら、もっとぎゅっと強く抱きしめられてしまった。

「寝ろ…!」

 言い捨てるような言葉だ。

 照れているのだろうか、とメイは解釈した。

 ちょっと笑いそうになるのをぐっとこらえて、彼の身体に頭をすり寄せた。


 でも、もうちょっと力を緩めてくれないと眠れない―― それは、彼女は言わなかったけれども。
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