冬うらら2

 子供の頃からの悪行のせいでもあるが、その悪ガキがついうっかり、子供の夢であるゲーム会社の社長なんかになってしまったことが、いろんな情報源から漏れてしまったせいでもあった。

 だから、もしいま隣の家の玄関でも開いたら。

『あらー、カイトちゃんじゃないのー! ひさしぶりー! 出世したんだってねぇ』

 と、バシバシ背中を叩かれる可能性が高いのだ。

 そんな姿をメイに見られたくなかったし、自分だってそんなメにはあいたくなかった。

 こんなヤバイ場所に、長居は無用。

 とっとと、用事を済ませて帰るにこしたことはない。

「行くぞ」

 そう言いながらも、メイが緊張している理由は、一応は分かっていた。

 一応というのは、会わせる相手が自分の親で、カイトにしてみれば分かり切っている相手でもあるので、その緊張は不必要だと思っているせいだ。

 理解はできるが、ムダとしか思えなかった。

『普通にしてりゃ、それでいい』

 そう二度ほど言ったのだが、彼女には通用しないらしい。

 となると、もう直接会わせた方がいいだろう。

 カイトは、玄関のドアに手をかけた。

 そのまま開けようとして、一歩踏みとどまる。

 チャイムを、鳴らした方がいいのだろうか、と。

 自分一人なら、絶対に鳴らさないだろう。

 しかし、今日の連れはメイで。

 彼女の紹介として、帰ってきたのである。

 客として―― などと考えかけたがやめた。

 ここは、どう見ても自分が子供の頃から暮らした家で、もし親相手にチャイムなんか鳴らした日には、熱でも計られそうな気がしたのだ。

 特に、母親の方が口さがないので、メイの前で何を言われるか分かったものではない。

 無言で、カイトはその金属のドアを引き開けた。

 ガチャン。

 重苦しい音のおかげで、誰か帰ってくればすぐに分かる家だった。

 部屋で一人で悪さしている時でも、慌ててベッドの下に押し込んで隠したり、何事もなかったかのように違うことをしたりと、なかなか好都合だった。

 今日も、そういう意味では好都合だ。

 きっと、親にしてみれば、『きたっ!』というところだろうから。
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