冬うらら2

「それで、その……予定日はいつなの?」

 明らかに、メイに問いかけていた。

「は?」

 カイトの隣で、よく分からないという声があがる。

 彼も心の中で、まったく同じ言葉を思い浮かべていた。

 ほとんど同時に。

「あっ、あ、あの……来月の14日に…その……」

 メイが、やっと合点が言ったのか、結婚式の日取りを口にした。

 思い出すように、確認するように、カイトの方に視線をかすかに動かしながら。

 バレンタイン・デーということで、忘れる日でも間違える日でもなかった。

 一体、どこのロマンチストが、そんな日に結婚式を挙げるのか。

 任せた相手が悪かったが、今更言ってもしょうがないことである。

「えっ! 来月じゃない? まあ、どうしましょう……でも…目立たないわねぇ」

 ちゃんと食べてるの?

 母親が、大慌てし始める。

 父親も、いきなり落ち着かなくなる。

 そして、二人の視線は不思議そうにメイに。

 いや。

 カイトは分かった。

 分かったら、こめかみにピキピキと血管が浮き上がるのが分かった。

 両親は、メイの―― おなかをじっと眺めていたのだ。


「ふざけんな!!!!!!!」


 こんな下衆の勘ぐりをされているとは、予想もしていなかった。
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