冬うらら2
●
メイが、お風呂から上がって出てくると、カイトはコンピュータに向かっていた。
忙しい仕事が、また彼を襲っているのである。
休みも夜も、カイトを自由にしようとはしないのだ。
今日は、ほとんど両親への挨拶で時間がつぶれてしまったので、これからそれを取り返す気なのだろうか。
先にお風呂を済ませていたカイトだったが、彼女が出てきたのに気づかなかったようだ。
ソファに座った音か、目の端で動いた影か―― いずれかで、彼はハッと視線を投げたのである。
気にしないでくれてもよかったのだが、やはり同じ空間にほかの人がいると気が散るのだろうか。
「お茶でもいれて…」
そう切り出しかける。
ゆっくりお茶を入れてくれば、その間カイトが集中出来るのではないかと思ったのだ。
「いい!」
しかし、最後まで言う前に、カイトの言葉に叩きつぶされてしまう。
彼女は、唇を泳がせるハメになった。
集中をとぎれさせないように仕事をしてもらうには、もうメイは眠った方がいいのかもしれない。
その方が、きっと邪魔にならないだろう。
少ししょげながら、彼女はソファから立ち上がるとベッドの方に向かった。
歩きながら、言葉を考える。
『おやすみなさい』だけだと、カイトにだけ仕事をさせて、のうのうと惰眠を貪るように聞こえてしまうかもしれない。
『がんばってね』だと、眠らずに仕事しろと言ってるように聞こえてしまうかも。
『私が起きているとうるさいでしょ』だと、何となく卑屈だし、逆にイヤミに聞こえそうだし。
結局、ベッドのそばに到着しても、彼女は言葉を探せなかった。
振り返ると。
ディスプレイの画面が、真っ暗になっていた。
メイが、お風呂から上がって出てくると、カイトはコンピュータに向かっていた。
忙しい仕事が、また彼を襲っているのである。
休みも夜も、カイトを自由にしようとはしないのだ。
今日は、ほとんど両親への挨拶で時間がつぶれてしまったので、これからそれを取り返す気なのだろうか。
先にお風呂を済ませていたカイトだったが、彼女が出てきたのに気づかなかったようだ。
ソファに座った音か、目の端で動いた影か―― いずれかで、彼はハッと視線を投げたのである。
気にしないでくれてもよかったのだが、やはり同じ空間にほかの人がいると気が散るのだろうか。
「お茶でもいれて…」
そう切り出しかける。
ゆっくりお茶を入れてくれば、その間カイトが集中出来るのではないかと思ったのだ。
「いい!」
しかし、最後まで言う前に、カイトの言葉に叩きつぶされてしまう。
彼女は、唇を泳がせるハメになった。
集中をとぎれさせないように仕事をしてもらうには、もうメイは眠った方がいいのかもしれない。
その方が、きっと邪魔にならないだろう。
少ししょげながら、彼女はソファから立ち上がるとベッドの方に向かった。
歩きながら、言葉を考える。
『おやすみなさい』だけだと、カイトにだけ仕事をさせて、のうのうと惰眠を貪るように聞こえてしまうかもしれない。
『がんばってね』だと、眠らずに仕事しろと言ってるように聞こえてしまうかも。
『私が起きているとうるさいでしょ』だと、何となく卑屈だし、逆にイヤミに聞こえそうだし。
結局、ベッドのそばに到着しても、彼女は言葉を探せなかった。
振り返ると。
ディスプレイの画面が、真っ暗になっていた。