冬うらら2

 あれ?

 そう思うまでもなかった。

 コンピュータにまつわるすべての電気機器類が、電源供給を止めていたのだ。

 そして、立ち上がるカイト。

 無言のまま、近づいてくるカイト。

 ええー!!!

 彼は―― いきなり、仕事を終了してしまったのである。

 メイは驚いた。

 きっと、もっと仕事をするのだろうと思っていたので、この事実が信じられなかったのだ。

 どうしてまだ仕事をすると思ったのかは、自分でもよく分からない。

 一日つぶれたこともあったし、自分の身体が、彼と一緒に眠るには少し厄介な状態だったのもある。

 しかし、カイトはどう見ても、一緒に眠るつもりで仕事を終了させてしまった。

 嬉しいのだが、結果的には仕事の邪魔をしてしまったような気になって、近づいてくるカイトと、その向こうにあるコンピュータとを交互に見た。

 彼は、そんなメイに対して無言で、ベッドの中に潜り込んでしまう。

 ただ一人、いつまでも突っ立っているワケにはいかない。

 メイは、慌てて隣に潜り込んだ。

 それを待っていたかのように手が伸びて、部屋の明かりをあっという間に消してしまった。

 とりあえず。

 今日の両親との顔合わせで、メイに対して怒っているワケではないことが、それで何となく伺い知れたような気がした。

 一緒に眠る気でいてくれたのだから。

「今日は、すごく嬉しかった…ありがとう」

 複雑な嬉しさを抱えたまま、彼女はそう言った。

 本当は、もっと早く言いたかったのだが、車の中のカイトが不機嫌だったので言うタイミングを失っていたのだ。

 こうやって、二人暖かい身体を側に置いて、横になって力を抜いたら、今日一日のことが思い出される。

 そうしたら、言い忘れた言葉が呼び戻されたのだ。
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