冬うらら2

「『可愛い』…って、お世辞でも言ってもらえて嬉しかった。ホッとしちゃった」

 照れ笑いが浮かぶ。

 義母にあたる人が、何度もメイにそんな言葉を言ってくれたのだ。

『娘がほしかったの』と言った彼女は、メイが何か言うたびに、好奇心と優しい視線を織り交ぜた。

 思い出しながら、記憶の余韻にひたろうとしていた時。

 それが、摘み取られた。

 いきなりカイトが手を伸ばしてきて、彼女を抱きすくめたのである。

 きゃぁと、悲鳴を上げなかったのは幸いだった。

 腕の力は強く―― ムキになったような、ムスッとしたような声が聞こえた。

「オレの方が…」


 しかし、言葉の続きは、またもなかった。
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