冬うらら2

 こんなことを言えば、彼女は一体どうしてしまったのだろうかと不安になるだろうし、あきれてしまうかもしれない。

 メイは、メイ自身のものであって、カイトが――がーっっっっ!!!!!

 気持ちは、理屈ではないのだ。

 世の中の、頭がいいと自称する連中が、この暴れる気持ちに、どんなくだらない名前をつけようとも、彼には関係なかった。

 カイトにとってメイは、幸せという言葉が形になったものなのだ。

 勿論、それ以外にもいろんな気持ちが、周りを取り巻いてはいるが、彼女の中心はそれでできあがっていた。

 誰も、幸せを手放したくないと思うし、独占したいと思う。

 それが人の形をしていて、かつ抱きしめられる存在であるというのなら、尚更だった。

 幸せなんて言葉は、才能と金があれば手に入るものだと、カイトはどこかでそうナメてかかっていたのだ。

 今まで、彼はそうやって奪ってきた。

 才能があっても金があっても、それだけではメイは奪えなかった。

 彼女の前では、どちらも無力にさえ感じさせられる。

 だから、カイトはずっと、どうにかして幸せにしようとあがいていたのだ。

 そうでなければ、幸せがもっと魅力的なものの方に、飛んでいってしまいそうで。

 オレのもんだ! オレの! オレの!!!!

 イヤな考えを、その気持ちで振り払う。

 両親だろうが他の連中だろうが、カイトは何があっても彼女を手放す気はなかった。

 自分の巣にしまいこんで、ずっと外に牙をむけていたってよかった。

『かぐや姫でも手に入れたよう……』

 いつか、ソウマが言った言葉が頭をよぎる。

 それがどうした!

 カイトは、記憶を粉々に蹴り壊した。

 もしそうだとするなら、彼はきっと大きなミサイルを作って、月を壊すだろう。

 弓矢を構えて使者を追い返すことを考えるよりも、カイトならそうする。

 こんなにまで。

 こんなにまで、自分は。

 分かっていたことではあるが―― それで、苦しさが減るワケではなかった。
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