冬うらら2

 理性的はあるが、身体の弱い兄の王カイト。

 傍若無人で力もあり、短気で体力のある弟の将軍カイト。

 身体の中に、二人の王族が住み。

 二人とも、メイに心を奪われている。

 兄は。

 弟を遠い戦地に追いやるか、反逆者として牢の中に閉じこめないと、自分と自分の妻を守ることが出来ないのだ。

 狩猟祭は、失敗に終わってしまったのである。

 自分の中の二人が、一人の女を争う。

 こんな三角関係になる日が来るなんて、カイトは想像だにしていなかった。

「もう寝ろ…」

 だから。

 カイトは、風呂上がりの彼女に背中を向けたまま、そう言うしかないのだ。

 いまの勢力では、弟の方が相当に強いのである。

 抱きしめて眠れば、弟は間違いなく大軍を擁して、兄を討伐するだろう。

 そして、メイを泣かせてしまう。

「おやすみなさい…無理しないでね」

 少し寂しそうで、でも優しい彼女の声も、いまは弟の勢力を強める役割しか果たしていない。

 骨肉の争いはまだ続き―― カイトは、仕事を続けた。


 兄は、まだ死ぬワケにはいかなかった。
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