冬うらら2

 我慢しなくちゃ。

 メイがそう思った時。

「顔中に、寂しいって書いてあるわよ」

 ハルコに優しく微笑まれて、慌てて頬を押さえた。

 どうしてこう、顔に出やすいのだろうか。

「でも、たまには『側にいて』、くらいのワガママは言ってもいいと思うわよ。きっとその方が、カイトくんだって喜ぶわ」

 楽しそうな瞳で、そう言われる。

 こんな忙しい時期に、そんなワガママを言った日には、カイトが倒れてしまいそうな気がした。

 とんでもない、と首を横に振る。

「私には分からない重い責任とか、きっといっぱい持っているのに…私のワガママで、もっと重くしちゃうのはイヤです」

 重荷の存在に、なりたくなかった。

 足手まといもイヤだ。

 自分の足でちゃんと立って、彼と同じ方向に歩いていきたかった。

 置いていかれないように、時々小走りになってもいいから。

 その時に―― ちょっと手を握ってくれたら、きっと嬉しいけれども。

「あなたなら…どんなワガママだって、カイトくんは重くないと思うわよ」

 もっと寄りかかってあげなさい。

 そう言われても。

 メイは、困った。

 カイトが、自分に寄りかかってくれるのなら。

 それが分かるなら、きっと彼女も出来るかもしれない。

 でも彼はいつも、しっかり足を踏みしめて前に進む。

 それどころか、メイを寄りかからせようとさえしてくれるのだ。

 なのに、自分だけ都合のいい時だけ『おんぶ』に『だっこ』では、子供と同じではないか。
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