冬うらら2

01/27 Thu.

●48
 眠れない。

 メイは、パチンと目を開けた。

 世界は暗く、布団の中は温かい―― でも、一人きりだった。

 枕元の時計は、針に蛍光塗料が塗ってある。

 闇夜の中でも、いまの時間がはっきり見えた。

 4時55分。

 普通の人ならば、深い眠りの海の中だ。

 ふぅ。

 カイトが、帰ってこない。

 彼から電話が入ったのだ。

 ちょうど0時くらいに、部屋がノックされて驚いた。

 階下に住んでいるシュウだった。

 何の用かと思えば、カイトから電話が入っているという。

 この部屋にある電話を取るように言われた。

 慌ててメイは、コンピュータのそばに置いてある電話を取る。

 そういえば、これが鳴ったのを見たことがなかった。

 どうやら、ベル音を切ってあるようだ。

「もしもし?」

 こんな夜中に、わざわざ電話をくれるなんて。

 彼女は、胸を騒がせた。

 もしかしたら、何か起きたのではないかと心配になったのだ。

『今日は…帰れねぇ』

 受話器は、そうしゃべった。

 ついに、メイが恐れていた日が訪れたのである。

 ハルコも言ってたではないか。

 彼らの仕事は、忙しい時なら徹夜だってありえるのだと。

「そう……」

 分かっているのに、つい声が沈んでしまう。

 いけない、と自分に言い聞かせた。

 仕事で疲れているカイトに、そんな声を聞かせたくなかったのだ。

 ちゃんと、一人でも大丈夫だということが分かってもらえないと、お荷物になってしまう。
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