冬うらら2

「無理しないで、お仕事頑張ってね」

 一生懸命笑顔を浮かべて―― 思えば、この笑顔は電話では伝えることが出来ないのだが、とにかく、声だけでも笑顔が伝わるように、メイは意識して唇を動かした。

 そして、彼は帰ってこないことが決定したのである。


   ※


 ついにメイは、ベッドから起き出してしまった。

 カイトだって、仕事をしているのだ。

 自分も眠れない。

 それならば、無理して眠ろうとする必要は、ないように思えたのである。

 幸い、彼女には編み物という強い味方があった。

 何気なく思いついたものではあったが、何度となく寂しさから救ってくれた。

 カイトのことを思いながら、一人の時間をたくさん消化してくれる、魔法の道具。

 平日には、一人の時間がたくさんあることを証明するかのように、セーターはどんどんできあがっていく。

 週末が間に入るのを考慮しても、そう遠くなく完成しそうだ。

 バレンタインには、十分間に合う。

 喜んでくれることを、想像しながら編む。

 ちょっと、気になるところはあったけれども。

 ちょっと。

 この家に、テレビはない。

 家にいる時間が少ないせいか、興味がないのか、カイトはそれを置いていなかった。

 退屈でしょうと、昨日来たハルコがちっちゃなカードラジオをくれたのだ。

 正確には、ウェディングドレスの衣装合わせに出かける時のことだった。

 ハルコの車の中に、それが箱入りで置きっぱなしになっていて、何だろうと手に取ったところ、そんな話になったのである。

 ソウマが、どこかの会社から記念品でもらったものらしい。

 ラジオの表面に、『○×株式会社 創立50周年記念』と金文字で入っていた。

 ラジオは、編み物セットの入っている紙袋に、一緒に入れておくことにした。

 編み物の時に、聞こうと思ったのだ。
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