冬うらら2

 2時。

 3時。

 4時。

 5時。

 限界だった。

 カイトは、フラつきながらも、帰巣本能が働いてしまったのだ。

 帰り着いた時、メイが起きていたのには驚いた。

 しかし、それを詳しく考える余裕も気力も体力も残っていなかったカイトは、『1時間後に…』という言葉の直後、意識を失った。

 気絶するように、眠ってしまったらしい。

 1時間後に優しく揺り起こされた時、彼はベッドの上の、そのまた布団の上に眠っていた。

 毛布と暖房のせいで寒くはなかったけれども、彼女の前でみっともないところを見せてしまったような気がして恥ずかしかった。

 ただ。

 1時間とは思えないくらい、ぐっすり眠れた。

 ギリギリまで疲れて帰ってきた、ということもあるのだが―― それとは、またちょっと別の、温かい、柔らかい、何か安心しきって眠ったような気がしたのである。

 しかし、そんなメルヘンちっくなことを、いつまでも彼は抱えていられない。

 ぶんと、振り払った。

 この仕事というのは、不思議なもので。

 キーボードやマウスを使っているだけで、いつの間にか夜が来る。

 時計を見ると、もう10時過ぎだった。

 カイトは、どうしようか迷っていた。

 メイに、会いたいのは山々だ。

 今すぐ帰って抱きしめたい。

 しかし、本当にそうしても大丈夫なのかという、自信も確信もなかった。

 いまのこの状態で、途中で止められるのほど残酷なことはないのだ。

 しかし、もう一度『帰れねぇ』発言が出来るかどうか。

 いや、もう出来ない。

 それは、昨日でよく思い知らされていた。

 フラ、と立ち上がった。

 この調子なら、きっとベッドにさえ沈めば一瞬で眠れるに違いない。

 そう予測したのだ。
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