冬うらら2

 彼女が、風呂に入っている間にでも沈没して朝まで熟睡すれば、兄弟の骨肉の争いなど見ずに済むに違いない。

 どちらもメイを奪うことも出来ないまま、戦い疲れで眠ってしまえばいいのだ。

 これで、彼女には軽蔑されずに済む。

 カイトは、眠い頭で帰ることに決めたのだ。

 何の問題もないはずだった。

 甘かった。

「お帰りなさい」

 帰り着いて、メイの嬉しそうな笑顔を見るや―― 眠気はすっ飛んでしまったのだ。


   ※


 寝ろ! いますぐ寝ろ!

 お帰りのぎゅーは、本当に一瞬だけ。

 触った瞬間に、全身に電流がビリビリと走って。

 いや、もうそれは稲妻だ。

 バリバリと、音を立てるのだった。

 ばっと離れる。

 身体の中で、弟がまばたきの間に武装終了したのが分かる。

 兄の方は、まだわたわたと甲冑を身につけている途中だというのに。

 食事の時間は、弟の行軍。

 戦いの準備も、まだ途中な兄の軍に向けて、着々と近づいてくるのである。

 戦いにかけては、弟の方が遙かに強いのだから、まともにぶつかっては兄の軍は全滅である。

 だから。

 兄は、逃げた。

 食事の後、まず風呂場に逃げ。

 風呂の後は、彼女と入れ替わり。

 最終的にはベッドに一人で逃げ込んだのである。

 このまま眠れれば!

 疲れているのは間違いないのだ。

 最近の睡眠時間と精神的なストレスで、彼はぼろぼろなハズだった。

 だから、一瞬で熟睡モードに入れる予定にしていたのである。
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