冬うらら2

 オオカミは、答えた。

「起きてる…」

 しぶしぶと。

 自分が側にいるのに、どうしてそんな寂しい声を出させなければならないのか。

 理不尽なこと、この上なかった。

 その寂しさを、追いやりたかった。

 カイトというカタマリで埋めて、隙間なんか1ミリも残っていないようにしたかった―― でも、ダメだ。

 彼女の望む形のぎゅーだけでは、彼自身が埋められないのである。

 もっと、必要なのだ。

「明日は…お仕事?」

 メイは、ベッドの側に立っている。

 運悪く、カイトはそっちの方を向いて横になっていた。

 今更、わざとらしく寝返りを打って背を向けるのはイヤで、そのままの状態を維持し続けている。

「休みだ」

 また、しぶしぶ。

 仕事は、いつでもカイトを待っている。

 しかし、結婚式のすべての用意を、メイばかりに任せているワケにはいかなかった。

 実際、明日は式場とやらで、打ち合わせが入っているらしい。

 本当は行きたくないのだが、彼女一人、心細い思いをさせたくないし、あの夫婦にメイを託すのにも、かなりの不安と不満があった。

 まだ。

 ソウマたちがいた方が、いいのかもしれない。

 彼女に、触れることが出来ないのだ。

 彼らが見ていたら、その衝動を抑えることが出来るだろう。

 そして、怒りはソウマに当たり散らせばそれでいいのである。

 この時ほど、彼らの存在を欲したことはなかった。
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