冬うらら2

 もどかしくて、いつも当たっているのかそうでないのか、分からない翻訳が多い。

 彼と言葉で通じ合うのは、すごく難しいのである。

 でも。

 もっと。

 強くて熱い気持ちを交わす方法を、カイトは教えてくれた。

 思いを全部、彼女の身体と心に焼き付けてくれる。

 あの瞬間だけは、誰よりも自分のことだけ感じて、考えてくれて。

 私だって。

 メイは、いま膝が震えたのに気づいた。

 しかし、それを振り払ってベッドに上がる。

 毛布と布団を少しよけて、自分がもぐりこむスペースを作る。

 指先も震える。

 怖くなってきて、カイトの方が見られない。

 すぐそこに横たわっていて、身体をこっちの方に傾けているのだから、きっと向こうからは、はっきり彼女が見られているだろう。

 顔も。

 身体も。

 もしかしたら、スケルトン・モデルみたいに、心の中まで見られているのかもしれない。

 ああ、すごくいたたまれない。

 カイトのことが好き、がいっぱい詰まっている胸。

 でも、その胸は、同時に彼に好かれたがっていた。

 触れて。

 この心を―― 可愛がって。

 彼の、すぐ側に潜り込む。

 すぐに明かりが消えたのは、カイトが待っていてくれた証のような気がして嬉しい。

 でも、胸の速度は、それどころではなかった。

 嬉しいを、ちゃんと噛み砕くヒマもなく、彼の吐息がすぐそこにあることに気づいてしまったのだ。

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