冬うらら2

 ドキンドキン。

 まるで。

 誰かに告白する時のような、緊張感と震えに捕まる。

 頭のてっぺんからつま先まで、心臓だらけにさせられるのだ。

 お風呂上がりなのに、汗をかいてしまう。

 暗くてよかった。

 そうでなければ、今頃顔が真っ赤であることを、カイトに知られてしまっただろう。

 それよりも。

 自分の高くなった体温が、彼に伝わっていないかが心配である。

 心臓の音も聞かれているかもしれない。変な女だって思われるかも。

 でも!

 それらの不安事項を、全部振り切ろうとメイは唇をきゅっと閉じた。

 神様、神様! 神様!!!!

 震える指を、伸ばす。

 すぐに布に触れた。

 カイトは、動かない。

 その感触に、気づいていないのだろうか。

 なまじ、ビクッと驚かれるよりよかった。

 もしそうなったら、メイの方が余計に驚いて逃げ出さなければならなかっただろう。

 慎重に、まるで道のない山を登るように、彼女は指を上の方に動かした。

 布。

 布。

 布の溝―― きっと、これがパジャマの真ん中の切れ目の部分。

 ということは。

 見つけた。

 爪の先が、固い感触に触れる。

 それさえも、カイトの体温に染まっているような気がする。

 メイは、息を飲んだ。

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