冬うらら2
□51
 な、何が…。

 カイトは、全身からイヤな汗が、一気に吹き出してきているのが分かった。

 しかし、身体の方はわずかも動かせないまま、まさしく『ヘビに睨まれたカエル』状態で、完全に硬直してしまったのだ。

 彼が止まったからと言って、時間が止まったワケではない。

 カイトだけを置き去りに、世界だけは自動的に進んでいくのだ。

 1つ。

 2つ。

 3つ。

 何が、起きているのか。

 メイが、そうしているのは分かるのだが。

 一体何のために、いまパジャマのボタンを外しているのか―― しかも、カイトの分を。

 それが、分からないのだ。

 頭の中に、いろんな推理は巡らなかった。

 そんな心の余裕など、カイトにはないのだ。

 こうかもしれない、ああかもしれない。

 わずかの推理も浮かばないまま、ただボタンを外されていく。

 どうし…。

 推理はできなくても、疑問を浮かべるのはタダだ。

 しかも、思考能力はほとんど必要としない。

 しかし、カイトは最後までその疑問を思い浮かべることは出来なかった。

 のろまな彼よりも先に、パジャマのボタンは全滅させられていたのである。

 そして。

「………!」

 更に衝撃的な事実が、カイトを襲ったのである。

 メイが。

 カイトを。

 抱きしめてきたのだ。
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