冬うらら2

 興奮が、彼を突き飛ばす。


「抱きてぇ!」


「今日も昨日も、その前も! おめぇを抱きたくねぇ日なんかなかった!」


「けど、それじゃおめぇを困らせちまう…そんなのは………『好き』じゃねぇ」


「それじゃあ…おめぇに…嫌われちまう」


 口から飛び出す言葉の面々を、自分でひどく驚きながらも、止めることは出来なかった。

 いままで、心の中では何度となく渦巻かせていたものではあったが、こんなに思い通りにならない瞬間に、一気に全て吹き出すとは思わなかった。

 しかも、コントロールさえできない。

 止めようとするのに、リモコンの壊れたラジコンみたいに、勝手に暴走するのだ。

 そのラジコンが、最後はどうなるか知っているのに。

 めちゃくちゃな動きをしつつ走り続け、最後はどこかの壁にぶつかって――グシャッ。

 ハァ、ハァ。

 一気にしゃべったせいで、その前からの緊張や興奮のせいで、カイトの息は千々に乱れていた。

 彼女を引き剥がしたままの、両肩に手を置いた状態で、彼は感情だけをメイにぶつけてしまったのである。

 その触れている部分さえ熱い。

 さあ。

 後は。

 グシャッ、を残すだけだ。

「………!」

 肩に置いていた手を、振り払われた。

 カイトが離すよりも先に、メイに逃げられたのである。

 分かっていたこととは言え、現実の出来事にカイトは打ちのめされる。

 さっきまで確かにあったはずの、手のひらの体温が失われる。
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