冬うらら2
●52
 言葉が。

 カイトの口から、激しい言葉があふれ出す。

 暗闇のベッドの中で―― メイは、信じられない思いで、その言葉を見ていた。

 聞くというよりも、目の前の皿の上に言葉が乗せられていて、すごい勢いで回されているような感じだ。

 回転寿司なら、絶対に商売にならない速度だろう。

 どの言葉も、頭から最後まで見るので精一杯で、意味を噛みしめているヒマはなかった。

 一体、彼がいくつ言葉を言い放ったかさえ、数えていることはできなかったのだ。

 頭の中で、回転寿司になっていたカイトの言葉が、何度も何度もグルグルと回る。

 同じ言葉ばかりだが、少しずつ速度を落とつつあった。

 ようやく、一つ捕まえた。

『お…おめぇといると…ダメだ』

 この時は、まだ誤解が先行していた。

 メイといることで、彼がダメになるのではないかと。

 引き剥がされたショックも、まだ抜けていなかった。

 次の皿を。

『おめぇに触れられると……我慢できねぇ。ひでぇこと、しちまう…メチャクチャにしちまう』

 我慢って…何の?

 何の我慢? ひどいことって何? メチャクチャって…どういうこと??

 まだよく分からない。

 また、次の皿を。

『ただ…ぎゅっと抱きしめるだけじゃ…終われねぇんだ』

 え?

 ここらから、いきなり絵皿になる。

『抱きてぇ!』

 ええー!!??

『今日も昨日も、その前も! おめぇを抱きたくねぇ日なんかなかった!』

 ええええええー!!!???
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