冬うらら2

『けど、それじゃおめぇを困らせちまう…そんなのは………『好き』じゃねぇ』

 え、えっと…それじゃあ。

『それじゃあ…おめぇに…嫌われちまう』

 そんなこと…。

 苦手な味が、襲いかかってくるのではないかと思ったのに、どれもこれも幸せの味がした。

 本当に、その味通りなのかと、メイは疑わずにいられなかった。

 自分の都合のいい解釈ばかりしていないかと、彼女は必死に抜け穴を探したのだ。

 まだ彼女は、手放しで幸せを噛みしめるクセが、ついていなかったのである。

 しかし。

 これだけたくさんの言葉を、一気にたたみかけられては。

 まるで。

『メイのことがとても好きなので、我慢しなければいけない』―― そう言っているように聞こえたのだ。

 何故我慢をする必要があるのかと考えかけたが、この場合は、きっとまだ彼女がオトメデーなのだと思っている、と解釈するのが妥当だろう。

『今日も昨日も、その前も! おめぇを抱きたくねぇ日なんかなかった!』

『けど、それじゃおめぇを困らせちまう…そんなのは………『好き』じゃねぇ』

 一番、自分にとって都合のいい言葉が、その2つだ。

 甘エビだ。

 プリンだ。

 回転寿司で、一番の好物のその2つになって、彼女の周りを回り始める。

 夢でしか、ありえない光景だった。

 ぎゅうっが、ひきはがされたのも。

 態度がぎこちなかったのも。

 全部、カイトは我慢しようとしてくれていたのだ。

 お、落ち着いて。

 自分にそう言った。

 こんな言葉を聞かされては、絶対に落ち着けないと分かっていたからこそ、あえて先行してそう自分を戒めようとしたのである。
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