冬うらら2
□
あきらかに、ベッドの外に出ようとするような動きだ。
あの音は、カイトの安眠を妨害しただけでなく、彼の妻、メイまでも連れて行こうとしていたのである。
こんな、許せないことはなかった。
「きゃっっ!」
驚く身体を、彼は強く引きずり戻した。
『行くな!』、という意味を込めたのだが、ただでさえ言語中枢に問題のあるカイトだ。
起き抜けでは、余計に制御が聞かず、無言での行動になってしまった。
そのまま、ベッドの中で抱き込む。
「あっ! カイト……電話」
驚きながらも、自分がベッドを出る目的を伝えようとする体温。
ギロッと音の方を睨むと―― 机の上の携帯電話が目に入る。
安眠妨害の犯人は、あれだったのだ。
「出んな」
相手が誰にせよ、この2人の時間を奪い取る相手であることは間違いないのだ。
いきなり現実に引き戻されて、2人よそよそしく服を着て、何事もなかったかのような生活を始めるための、別れの合図と同じだった。
せっかくの、週末の朝くらい。
少しくらい。
カイトが、自分の希望を前面に押し出そうとした、その時。
「あっ!」
腕の中のメイが、ひどく驚いた声をあげる。
ん? と、彼女の向いている方向に視線をやると、それはケイタイの方ではなく、枕元だった。
チクタクの時計。
針は、ちょうど傾いた状態で重なっていた。
左に45度ほど。
10時―― 50分。
「ど、どうしよう!! 今日の打ち合わせ、10時半からだったのに!!」
腕の中の身体の温度が、ふっと下がったのが分かった。
後ろから抱きしめているので見えないけれども、きっと青ざめているのだろう。
おめーが、体温下げるほどのことか。
カイトは面白くなかった。
あきらかに、ベッドの外に出ようとするような動きだ。
あの音は、カイトの安眠を妨害しただけでなく、彼の妻、メイまでも連れて行こうとしていたのである。
こんな、許せないことはなかった。
「きゃっっ!」
驚く身体を、彼は強く引きずり戻した。
『行くな!』、という意味を込めたのだが、ただでさえ言語中枢に問題のあるカイトだ。
起き抜けでは、余計に制御が聞かず、無言での行動になってしまった。
そのまま、ベッドの中で抱き込む。
「あっ! カイト……電話」
驚きながらも、自分がベッドを出る目的を伝えようとする体温。
ギロッと音の方を睨むと―― 机の上の携帯電話が目に入る。
安眠妨害の犯人は、あれだったのだ。
「出んな」
相手が誰にせよ、この2人の時間を奪い取る相手であることは間違いないのだ。
いきなり現実に引き戻されて、2人よそよそしく服を着て、何事もなかったかのような生活を始めるための、別れの合図と同じだった。
せっかくの、週末の朝くらい。
少しくらい。
カイトが、自分の希望を前面に押し出そうとした、その時。
「あっ!」
腕の中のメイが、ひどく驚いた声をあげる。
ん? と、彼女の向いている方向に視線をやると、それはケイタイの方ではなく、枕元だった。
チクタクの時計。
針は、ちょうど傾いた状態で重なっていた。
左に45度ほど。
10時―― 50分。
「ど、どうしよう!! 今日の打ち合わせ、10時半からだったのに!!」
腕の中の身体の温度が、ふっと下がったのが分かった。
後ろから抱きしめているので見えないけれども、きっと青ざめているのだろう。
おめーが、体温下げるほどのことか。
カイトは面白くなかった。