冬うらら2

 あんなにカイトが。

 我を忘れるほど激しく抱いた後に、そんなことを聞かれたのだ。

 好きな女でなきゃ、彼があんなにも壊れるハズがないというのに。

 しかも、ただの好きでもない。

 何もかもカイトの中では、ギネス記録がつくほどに荒れ狂う『好き』なのに、どうして彼女はそれを理解出来ないのか。

 もしかして。

 メイにとっては、彼とのベッドは愛情を感じないのだろうか。

 確かに、カイトがガツガツしてしまったが、それでも後から我に返って、何とか、色々――

 しかし、女は『好き』という言葉を聞きたいものなのだろうか。

 それを聞かないと、安心できないか。

 彼女は、その言葉を望むのか。

 聞きたいと願っているとするなら。

 メイを抱きしめたまま、だらだらと背中に汗をかく。

「ほんとに…出かけない?」

 胸の中で、そんなカイトの気持ちを知らない声が、不安そうに聞いてくる。

 出かけねぇ、という意味を強く腕に込めた。

 す。

 カイトの頭に、その文字がよぎる。

 そのまま、口に乗せればいいのだ。

 ただ、それだけだ。

「す……」

 抱きしめている腕にまで汗をかきそうな状態を、カイトは憎んだ。

 自分が、彼女のために無理をしようとしているのが分かっていた。

 しかし、それをメイが望むなら、無理を承知でも。

「え?」

 頭の側から聞こえた声に、何かと思ったのだろう。

 チョコレート色の瞳が、不思議そうに見上げてくる。


 い……言えねぇ。


 カクベツの『好き』な女に、たった一言も言ってやれない不甲斐ない自分に、カイトはがっくりとマウンドで膝をついた。


 砂を集めて袋に詰め―― また、来年。
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