冬うらら2

 そんなことを考えながら眺めていると、さすがに視線に気づいたのか、赤い瞳がぱっとこっちを向く。

 慌てて顔をそらして、一生懸命宛名書きに打ち込んでいるようなフリをするのだ。

 でも、チラリ。

 すると、カイトが椅子から立ち上がっているのが見えた。

 その上、メイの方に近づいてくるではないか。

「あ、ごめんなさい…気が散る?」

 あんまり自分がチラチラ見るせいで、落ち着かなくなったのだろうかと、彼女は慌てた。

 でも、怒っている様子ではなかった。

 じっと、メイの顔を見つめている。

 や、やだ。

 どきどきする。

 心が騒ぐ。

 彼が、わざわざ自分に触れにこようとしているのだろうか―─ そんなことはない。

 ううんでも― 交錯する気持ちに、彼女は収集がつけられなくなってしまった。

 朝からずっと接触したがるカイトの態度が、余計に心を惑わせるのだ。

 そう、朝だって。

 いや、もうほとんど昼近くまで、眠っているワケでもないのに、ベッドの中で抱きかかえられたままだった。

 まるで、卵にでもなった気分だ。

 このまま、カイトの体温で孵化できそうなくらいの時間が過ぎるばかり。

 昨日までの、どこかぎこちなかった時間を埋めるかのように、彼はなかなか腕を緩めてくれなかった。

 それが、嬉しくて恥ずかしくて。

 カイトからの行動は、ただ「嬉しい」だけじゃなく、その後に必ず何かくっつくのだ。

 「嬉しくて戸惑う」とか、「嬉しくて恥ずかしい」とか、「嬉しくて切ない」とか。

 メイも、ベッドを出たくなかったのだけれども、ぐぅっとおなかが鳴ってしまって。

 それが、死ぬほど恥ずかしかった。
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