冬うらら2

 静かで密着した状態なのだ。

 絶対に、彼に聞かれたに違いないのだ。

 でも。

 そんなお腹の虫に、一瞬面食らった直後、カイトは笑った。

 それから、ようやく腕を解いてくれたのである。

 その。

 腕の感触を、覚えている。

 あの身体が、ぎゅっと自分を抱きしめてくれたのが、まだずっと残っているのだ。

 自分に力を刻んだ、そのカイトが、近づいてくる。

 どきどき。

 彼の足の向きが、間違いなく自分の方であるのだと、確信すればするほど、彼女の鼓動は高まって、身体は硬直してしまう。

 すぐ側で、足が止まる。

 膝が曲がって、同じ目の高さになる。

 顔がすぐ間近だ。

 指先が伸びる。


 ドキンッ!


 心音が最高潮に達して、それだけでメイは気絶してしまいそうになった。

 毎日毎日見ている顔なのに、全然慣れない。

 彼の指が。

 指が。

 頬に。

 ぐっ。

 え?

 メイは、目を見開いた。

 カイトの指は、確かに彼女の頬に触れた。

 しかし、そっと包み込む―― などという行動ではなく、指先が強く彼女の頬をなぞったのである。

 とてもじゃないが、甘い雰囲気につながる触れ方ではなかった。
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