冬うらら2

 別に浮気をしたとか、ハルコをないがしろにしたということではな―― いや、結果的にはないがしろにしたのだろう。

 彼女のことを、信じすぎていた。

 ではなく。

 彼女のことを見くびっていた、の方が正しいか。

『遠く離れていても、ずっと2人の心はつながってるさ、ハハン』

 男は、そんなロマンチストで、厄介な生き物だったのだ。

 だから、少々ハメを外しても度を超しても、ずっと昔から刻んできた時間に、ヒビ一つ入るものかと思っていた。

 だから彼は、密林の中に幻の植物を探しに行ったりという、どこかの特番のような真似ばかりしていたのだ。

 そのジャングルで、綺麗な宝石の原石を拾って。

 これは、ハルコへのおみやげにしようと、予定よりも大幅に遅れて帰国してみれば。

 彼女の部屋のドアは、固く閉ざされたままで、ソウマに向かって開くことはなかったのだ。

 大ショックだった。

 これまで、他の誰よりも当たり前のように開かれていたドアが、叩いても呼んでもダメなのである。

 天の岩戸よりも、強力だった。

 電話も、すぐ切られてしまう。

 何故、そんなに彼女が怒っているのか、理由さえ聞かせてくれないのである。

 放浪癖ならいつものことじゃないか、何故今回に限って―― ソウマは、不思議でしょうがなかった。

 しかし、同時に一番の危機感を感じていた。

 ここでしくじったら、一生彼女を失うのではないかと。

 それくらいの本気を、ハルコから感じていた。

 分かりやすく、スネたり甘えたりする性格ではないということは知っていた。

 物わかりがよく、出来るだけ感情のコントロールを、しようと努力しているのも。

 きっと。

 それが全部積み重なって、爆発してしまったのだろう。
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