冬うらら2

 ついに足が止まった時。

 彼らも、玄関のドアのところで立ち止まった。

「大事にしろよ」

 ニヤッと、ソウマが最後に決めようとしたのに。


 ズダダダーッッッッッッ!!!!


 もう、カイトはそこにはいなかった。

 物凄い轟音を立てて、いま降りてきた階段を走り登って行ったのである。

「ちょっと甘やかしすぎか?」

 その轟音を視線で追いかけて、見えなくなった後―― ポツリとソウマは呟いた。

「それじゃ、私もちょっと甘やかしてもらおうかしら。今夜はパスタにしない?」

『パスタ』

 それは、ソウマに料理を作って欲しい時の、合い言葉。

「オレは、他の料理も得意だぞ」

 何度もそう言ったにも関わらず、ハルコはパスタ料理ばかり彼に任せる。

 これは、どういうことなのだろうか。

 まだ、自分と彼女の間には『謎』がある。

 10年以上の、歳月があってもこうなのだ。

 ソウマは、軽く2階の方に視線を上げた。

 そこでは、にわか夫婦が一悶着を起こしているに違いなかった。


 ざまぁみろ。
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