冬うらら2
□57
 ソウマは、振り返りもせずにそれを寄越した。

 一枚の紙切れ―― ではなく、ハガキだった。

「………?」

 宛先は、知らない住所と名前だ。

 何故こんなハガキを、彼に寄越すのか。

 わざわざ、メイから引き剥がすような真似までして。

 じっとそれを見ていると、自然と足が遅くなる。

 2人が先に進んでいるのは分かっていたが、見送りがメインディッシュではないのだ。

 気になるハガキの方に、完全に意識を持っていかれていた。

「……!」

 知っていたのは、差出人の名前。

 メイの名前が、書かれていたのだ。

 このハガキは、彼女が出したハガキなのだ。

 宛名をもう一度見るが、知らない名前だ。

 だが、女であることはすぐに分かった。

 そして、このハガキは『宛先不明』で戻ってきたのだと、郵便局のスタンプで読みとれる―― 探偵でなくても、ここまでは簡単に分かるだろう。

 慌てて、カイトはハガキをひっくり返した。

 心臓が騒いでいた。

 足を止める。

 もう彼の意識からは、ソウマ夫婦のことは抜け落ちてしまっていた。

 メイの文字が、そこに並んでいた。

 丸っこくて小さくて、一生懸命丁寧に書いたのが一目で分かる。

 性格が、そのまま表れているかのようだ。

 内容は、女友達に宛てたもののようだった。

『いきなり、いなくなってごめんね』とか、『元気でやってます』とか。

 ハガキの中に、メイがいた。

 カイトが知らない、女友達の前での彼女の姿を、覗き見しているようで落ち着かなかったが、自分の視線を止めることはできなかった。
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