冬うらら2

 きっと、ハルコはいまとは違う雰囲気だったのだろう。

 女将に振り回されて。

「でも、居場所を教えてくれてありがとう…よかったわ」

 最後の微笑みに、メイは逆に不安を覚えた。

 本当にあの女将が、ハルコの探している人なのか、責任重大に感じたのだ。

 さっそく行ってみるわと、アルバムを抱えて彼女は帰って行ってしまった―― どうか、その人でありますようにと、彼女は心配しながらそれを祈ったのだった。


    ※


 帰ってきた!

 着替えと準備を済ませていたメイは、車の音に大慌てで玄関まで駆けつけた。

 時計は6時30分。

 夕方の混雑で、渋滞していることを考えれば、教会に7時に到着できるかどうか。

 彼女は道には詳しくないので、どのくらいかかるのか、地図を見てもピンとこなかったが。

 バタン、と大きな音を立てて、玄関のドアが開く。

 大急ぎで帰ってきましたというカイトが、ネクタイも乱したままそこにいて。

 忙しい仕事の中から、何とか時間を工面してきてくれたのだろう。

 カイトは、『悪い、遅くなった』とか言おうとしたようだったが、メイが彼のネクタイをきちんと直してあげ終わる頃には、唇をきゅっと結んでしまっていた。

 落ち着いてくれたようだ。

「行くぞ…」

 玄関に鍵をかけて、車に乗り込む。

 暖房の効いている、暖かすぎるシートに収まった途端、車は走り出して。

 しばらく、その重力の向きになじめずに、彼女はシートに背中をへばりつかせていた。

 カイトに、昼間の話をしたかった。

 あの居酒屋の女将さんが、ハルコの知り合いかもしれないということを。
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