冬うらら2
□61
 墓参り!!!!!!

 メイの口から、想像だにしない単語が出てくるのは、毎日のことなのだが、今日もカイトは驚かされてしまった。

 彼の頭の隅には、わずかにもない言葉だったのだ。

 大体、カイトの両親は健在で、墓も存在しないのだ。

 祖父母の墓となると、どこかにあるらしいが、カイトがそこに行ったのは、もう遙か昔のことで、記憶の片隅どころか、チリくらいにしか残っていなかった。

 しかし、メイは違う。

 そう遠くなく、親を亡くしているのだ。

 墓参りくらい。行きたくても当然だった。

 そんなことも、自分は思いつくことが出来なかったのである。

 もっと、彼女の立場になって、いろんなことを考えてやらなければならなかった。

 そうしないと、毎日毎日、自分の気の回らなさに悔しい思いをするばかりだ。

 ただの墓ではない。

 メイを産んで、育てた両親の墓なのだ。

 不謹慎な話だが、彼らが亡くならなければ、メイがあんな店で働くことはなかったかもしれない。

 そうすれば、カイトとは出会わなかったのだ―― おそらく。

 彼女の運命を、現在の方向に回してくれた人。

 いや、それ以前に、こんな素直で真っ直ぐで、彼がおかしくなってしまうくらいの存在を育て上げた人なのだ。

 普通は、故人だろうが生きている人だろうが、こんな気持ちを持ったことはなかった。

 見たこともない相手に、敬意に似た思いを抱くなんて。

 だから、会社に電話を入れて遅刻を告げた。

 仕事も確かに大事だ。

 しかし、これとは秤にかけることも出来ない。

 惚れた女の親への挨拶。

 そのくらいしたって、バチは当たらないはずだ。

 それどころか、しない方がバチが当たりそうである。
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