冬うらら2

「お客さま?」

 メイは立ち上がった。

「出んな」

 しかし、速攻でその動きが制される。

 え?

 彼の方を見ると、物凄く不機嫌そうな表情をしていた。

 いやもう、怒っていると言ってもいいくらいだ。

「でも…お客様…」


「座れ!」


 大きな声に気圧されて、メイは慌てふためいてソファに座った。

 このまま放っておけば、お客は主が不在だと思って帰ってしまうだろう。

 そういえば、玄関にはカギをかけたままだったような気がする。

 おそらく間違いなく、お客は入ってはこられない。

 誰か分からないけれども、門前払いは間違いなかった。

 チャイムは、あと4回鳴った。

 メイはそわそわとしたけれども、カイトが絶対に行くな、というようなオーラを出しているような気がして、ソファから身動きもできない。


 5回目のチャイムは―― 鳴らなかった。
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