冬うらら2

 ガサガサバサバサッ!!!!

 見えてもいないセーターを、彼女はさらに袋の中に押し込めた。

 完全に、動揺してしまっていたのだ。

 クローゼットの整理でもしているような風に、さりげなく装えばよかったのに、この時のメイは、完全に怪しかった。

 しかし、とにかく隠さないとという気持ちでいっぱいだった彼女は、その紙袋をクローゼットの奥に押し込み、慌てて扉を閉めると、カイトの方を振り返ったのである。

「ど、ど、どうしたの?」

 ああああー!!!!

 内心では、彼女はもう泣きが入っていた。

 どうしてこう、自分はウソをついたり、ごまかしたりするのが苦手なのか。

 怪しんでくれと、言ってるような態度ばかりになってしまう。

 顔を上げて、カイトをしっかり見ることも出来なくて、ちらりと盗み見るような形になった。

 彼の表情は、やはり眉間にうっすらと影を浮かべ、怪訝の色を明らかにしている。

 どうしよう!

 どうやってごまかそう。

 メイの頭の中には、いろいろな単語がめぐるが、どれもヘンテコな嘘ばかりで、何一つ使い物にならなかった。

「あ! お風呂ぬるかった? それとも、石鹸なくなった?」

 とにかく、この場から彼をひきはがそうと、急ぎ足でカイトの方へと向かった。

 彼は、まだ衣服を脱いだ様子もない。

 何かあって、出てきたに違いないのだ。

 そのトラブルを解決して、話をそらそうと思ったのだ。

 しかし。

 カイトの視線は、閉ざされたばかりのクローゼットに向けられている。

 あそこに、何か秘密があることを、知られたのは間違いないだろう。

「カッ、カイト…お風呂どうかしたの?」

 必死の声で、彼の視線をせめて自分に向けさせようとする。

 聞かれたらどうしよう。聞かれたらどうしよう。聞かれたら。

 渦巻く不安で、喉をカラカラにさせながら、メイは裏返った声を出す。
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