冬うらら2

 夜中。

 カイトは―― 仕事のこととメイのことと、疲労の全てを脳に押し込めて帰りついた。

 しかし、気にしてはいけないと、またも自分に言い聞かせる。

 いつものように玄関を開けて、彼女の『お帰りなさい』を聞いて、それからぎゅっと抱きしめて。

 それで幸せなのだから、いいではないか。

 これ以上、ゼイタクを言うと、舌をちぎられそうだった。

 すぅっと、一つ冷たい夜風を吸い込んで。

 彼は、玄関の扉を開けた。

「おかえりなさい!」

 パジャマにカーディガンをひっかけて、メイが出迎えてくれる。

 その身体を、ぎゅっと抱きしめる。

 のだが。

 んあ?

 カイトは、異物感に気づいた。

 いつもなら、もっと彼女と密着出来るはずなのに、胸の辺りに何かつかえているのだ。

 確かに、彼女の秘密は気になってしょうがないが、そのつかえじゃない。

 もっと現実的な、形あるもの。

 そっと、メイの身体を離すと。

 彼女が、胸に袋を抱えているのが分かった。

 結構大きなもので―― これが、カイトとの抱擁の邪魔をしていたのである。

「あっ、あ…これね」

 視線に気づいたのか、メイがその袋を持ち直す。

 それから、カイトの方へと差し出した。

 よく見ると、綺麗に包装された上に、リボンまでかけられている。

 どう見ても、贈り物のようだった。

 オレに?

 まだよく分からずに、カイトはクビを微かに傾けた。

 誕生日でもない。

 クリスマスでもない。

 なのに、どうして何かを彼に寄越そうとするのか。

< 321 / 633 >

この作品をシェア

pagetop