冬うらら2

「ちょっと早いけど…当日はダメだから…あの…バレンタインのプレゼントなの」

 えっと、気に入ってくれると嬉しいんだけど。

 だんだん赤くなって、うつむかれてしまった。

 バ。

 バレンタイン?

 カイトは、慌てていまの月を確認しなおした。

 確かに、今月は2月で。

 そして、その当日に彼らは、結婚式を挙げる予定になっていた。

 しかし、バレンタインと言えば、チョコレートではないのか。

 いままでカイトだって、もらったことくらいある。

 女子社員の義理とか、学生時代は物好きな女からとか。

 が、彼は甘い物が好きではなかったので、ありがたい行事ではなかった。

 こんな巨大なチョコレート―― だったら、カイトはどうすればいいのか。

 プレゼントをもらうのにも不慣れなカイトは、戸惑いを隠せずに、促されるままにその袋を受け取った。

 だが、どう見ても手触りが、チョコレートとは違った。

 袋の中で、柔らかい感触が手のひらに伝わる。

 ガサッ。

 カイトは、包装を解いた。

 本当はバリバリとむしり取りたいのだが、ぐっとこらえてゆっくりと袋の口を開けた。

 白い。

 羊の匂いがした。

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