冬うらら2
●67
 ドキドキドキドキ。

 メイは、じっとカイトの動向を見守った。

 彼が、袋を開けていく指の動きも目の動きも、それから袋の中を覗き込んだ後も―― 全ての反応を記憶しておこうと、必死でカメラを回していたのだ。

 よ、喜んでくれるかな?

 それが、すごく不安でしょうがない。

「多分喜んでくれる」に8票投票されているのだが、それでも、残り2票は違う結論を出しているのだ。

「普通」とか、「興味ない」とか。

 彼女の心の中から、「イヤがる」だけは除外していた。

 そんなことを考えようものなら、余計に不安になってしまうからだ。

 思えば。

 メイから彼に何か贈るのは、これが初めてのことだった。

 いままで、服や指輪を彼女は買ってもらっていたが、逆はなかったのだ。

 第一、自由になるお金は、ほとんどなかった。

 だから、気軽に何かを買ってあげるということは、不可能だったのである。

 確かにカイトは、まるで好きに使えと言わんばかりに、大金の入った通帳を彼女に投げて寄越してくれていた。

 その額を見て、驚いたのだ。

 どうして、こんな金額を全部、普通預金に入れているのか。

 貯金に、税金がかかっちゃう!

 最初に考えたのは、そんな所帯くさいもので。

 慌てて小分けして、郵便局などの定期にしたのである。

 こっちの方が、利子もいいし。

 そうして、預金通帳から税金を取られないようにしたのだった。

 メイは、その作業を終えたことで大変満足してしまい、自分が使って減らす、ということには考えが及ばなかったのである。

 いや、勿論日常生活を営むための買い物は、ちゃんとしている。

 しかし、こちらはハルコが渡してくれた家政婦用の通帳に、まだたくさん金額が残っているので、そのメインの通帳に手をつける必要はなかった。
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