冬うらら2

 うわぁ。

 彼女は、大きく目を見開いた。

 セーターを編んでいる間、ずっとカイトが着たところを想像していた。

 本についている、モデルの人の顔を彼にすげ替えたりして、似合うとか似合わないとか考えていたのである。

 しかし。

 本人が実際に着込んだ時の姿は、やっぱり想像とは一致していなかった。

 モデルのように、ポーズをつけているワケでもなく、表情もキメてるワケでもない。

 いつもの仏頂面に見えるけれども、どこか少し。

 そう、頬の端の辺りが、少しだけ照れているような顔に見えたのだ。

 けど。

 白いセーターは、思いの外カイトの肌の色と合っていて―― 彼女の胸をドキドキさせた。

「あったかい?」

 ギュウっと抱きしめられるのはなかったが、もう既にメイは満足のレベルをぶっちぎっていた。

 着てもらえたのだ。

 それだけで、言葉にならないくらい嬉しい。

 聞きたいことは、本当はいろいろあったのだ。

 着心地とか、サイズとか。

 でも、一番最初に出てきたのは、そんな温度にまつわるもので。

 冬の寒い風の中でも、そのセーターがあったかければ、カイトを守れたような気がしたのだ。

 メイが、彼を守っているという実感ができそうな。

 二、三度、彼が口元を動かした後。

「あったけぇ…」

 ぼそっと、カイトは呟いた。

 視線が、斜め下に落ちるのは、じっと見られていることが恥ずかしいからだろうか。

「ホントに? ホントに?」

 その答えに、すっかり嬉しくなってしまって、彼女は念を押して尋ねた。

 あのカイトがあったかいと言ってくれているのだから、本当なのだろうが、メイにしてみれば、何度だってその言葉が聞きたかったのである。
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