冬うらら2

 あの『コウノ』の結婚式なのだ。

 あの『コウノ』の奥さんが見られるのである。

 あの『コウノ』に結婚指輪をさせた女を。

 み、見たすぎる~~~!!

 だから、椅子をギシギシ言わせて悶えるのである。

 ここで。

 ある男にとって、運の悪い事件が起きた。

 今までどこに行っていたのか―― そのある男が、開発室に帰ってきてしまったのだ。

 ハナの目が。

 キラーン!

「シャチョー!!!!」

 ずだだだだー!!!

 彼の姿を見つけるやいなや、ハナはダッシュ一番で側まで駆けつけた。

 周囲の連中が、ギョッとしているのは分かっていたが、いまはそれどころではない。

「シャチョー!! 私も披露宴に招待してくださいー! おめかししていきますから!」

 とっておきの笑顔だ。

 そして、強引な言葉。

 普通の気の弱い男なら、これでいつも言うことを聞かざるを得ない。

 女にいい顔をしたい連中なら、なおさらだ。

『しょうがないなぁ』と言わせればこっちのものだった。

 押せ押せパワーをうまく使えば、必要な物は手に入れることが出来るのである。

 内容が仕事でないだけに、彼女はこういうワザを炸裂させてまで、招待状を手に入れようとしたのだ。

 が。


「てめーは仕事しろ!」


 かえってきたのは怒鳴り声だった。

 さすがコウノである。

 やはり、気の弱い男を陥落させる時と、同じ技では通用しないようだった。
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