冬うらら2

「結婚式? 結婚するのか??」

 しかし、キズオの反応は、またも意外だった。

 驚いたように、その最後の単語に反応するのである。

 一体、うちの社長とどんな関係なのか。

「そうか…そりゃあよかった…」

 1人で何故か納得して、うんうんと頷いている。

「ちょっと、どういう意味! それは!!」

 これは、直感だった。

 キズオは、何か社長について知っている。

 おそらく、ハナの知らないことだ。

「ああ、いや何でもないぞ…それじゃあオレは帰るから。お休み」

 手早く、姉に別れのアイコンタクトを送るや、車に乗り込んでしまった。


「ちょっと、キズオ! 待てー!!!」


 真夜中だ。

 近所迷惑だ。

 にも関わらず、ハナは大声を張り上げた。

 絶対、おいしいことを知っているに違いない。

 あの態度は、怪しいにもホドがある。

 が、汚いオッサン車は、ばびゅーんと消えて行ってしまった。

 キーッッッッッ!!

 今日の男たちは、誰もかれも彼女を仲間ハズレにしようとする。

 ハナは怒りの顔のままで、キッと姉の方を振り返った。

「ケータイ!」

「え?」

「キズオのケータイ番号教えて! 今すぐ! ほら、早く! 早く!!!」

 チャットでご挨拶、どころではない話しになってしまった。

 しかし、おとなしいくせに姉は―― キズオの鼓膜を、最後まで守り通したのだった。
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