冬うらら2

 一生に一度。

 彼女の唇から出た言葉は、本人にしてみれば、自然と口からこぼれ落ちたものなのだろうが、カイトへの影響力は大きかった。

 メイから、『一生、添い遂げたい』と言われているも同然だった。

 結婚するのだから、それが大前提なのだが、やはり言葉にされると、胸にズシンと来る。

 ストレートな言葉じゃないだけに、尚更、真実のカタマリのような気がするのだ。

 そんなカタマリをかじらされてしまうと、カイトにまで彼女の気持ちが伝染してしまう。

 うっ、と身体が固まりそうになるのを、彼はこらえた。

 自分のこの態度が、何度となくメイを不安にさせたことを思い出したのだ。

 いつもの不意打ちは、回避できない時があるが、まだ冷静なうちくらいはどしっと構えて彼女を安心させたい。
 
「メ…」

 彼女の名前を呼んで。

 少しくらい、気の利いたセリフを何とかひねりだして。

 そう思っていたのに。

「あらあら、こっちにいたのね」

「今日こそは遅刻しないように、わざわざ迎えに来てやったぞ…ちょっと早かったか?」


 くんじゃねぇ!!!!!
< 339 / 633 >

この作品をシェア

pagetop