冬うらら2

「おめーらは必要ねぇだろ!」

 怒鳴ったカイトに、ノンノンと指を左右に振ってやった。

 どうしても、彼ら夫婦を邪魔者にしたいらしいが、そうはいかない。

 今日は、本番さながらの予行演習なのだ。

 本当は、式の前日に行うのだが、明日は日曜日。

 既に別の結婚式の予定が入っているので、教会の方の都合が悪かった。

 その日曜日の結婚式のリハーサルが午後から入っているので、彼らは空いていた午前中に、スケジュールをねじこんだのだ。

 日程の話を持ちかけた時、神父に。

『あなたたちの時も、ちょっと強引でしたが…今度は、更に強引な日程ですね』

 そう、微笑まれてしまった。

 今度のカップルの方が、遙かにとんでもない問題児―― ということは、神父には言わなかったが。

 いろんな細かな苦労を、出血サービスで手伝ってやっているにも関わらず、カイトはちっとも感謝する気配がない。

 最初から迷惑だったのは知っているし、いいものを見せてもらえるワケだから、その点については目をつぶっているのだが。

「悪いな…オレは、ベストマン。ハルコは、メイドオブオーナーだぞ。参加しなくてどうする」

 どうせ、分からないだろう。

 それを知っていながら、彼は専門用語を口にした。

 カイトの知っている専門用語など、オタク世界でしか通用しないようなものばかりに違いない。

 案の定、彼はうっと黙り込んだ。

 カイトという生き物は、知らないものを素直に知らないと言えない人種である。

 しかも、メイの前である。

 無知なところも、披露したくないに違いない。

「結婚式当日に、いろんな身の回りの世話をする人のことよ。あとは、結婚式の証人でもあるの」

 ああ。

 ソウマは、眉を動かした。

 ハルコが、さっさと答えをバラしてしまったのだ。

 もうちょっと、煮立たせてもいいと思っていたのに。
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