冬うらら2

 いつものワガママが出たか―― と思いきや、ハルコがちらっと目くばせを送ってくる。

 何か、ソウマに伝えようとするのだ。

 ん?

 しっかりと、カイトの全身を目に映した。

 そうして、視線を動かす。

 生意気な顔。
   ↓
 白いセーター。
   ↓
 ジーンズ。
   ↓
 スリッパ。
   ↑
 ジーンズ。
   ↑
 白いセーター。
   ↑
 生意気な顔。
   ↓
 白いセ―――

 おお!!!!

 ソウマは、ようやくそこで視線を止めた。

 ちょっと時間がかかったが、ハルコが何を言いたいのか気づいたのである。

 もしかして、これが噂の手編みのセーターか、と思ったのだ。

 噂、と言っても彼ら夫婦の間だけでの話だった。

 メイが、バレンタインプレゼントに、内緒でセーターを編んでいるということを、妻が楽しそうに話してくれたのだ。

 ただし、しっかりと口止めされたが。

 何度となく、カイトに言ってやりたい衝動にかられたものの、いままで彼はぐっと我慢してきた。

 その白いセーターを、いま彼は着込んでいるというのである。

 ほっほぉ。

 それは、着替えたくないワケだ。

「どれを着ていくか決めた? そういえば、この間買ったあの黄緑のドレスはどう? ちょっと寒いかしら?」

 ハルコは、そんな白いセーターにしがみついている新郎落第生よりも、新婦を綺麗に着飾る方に興味があるらしい。
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