冬うらら2
●71
「ほぉら、綺麗になったでしょ?」

 手鏡を持たされる。

 おそるおそる、その中を覗き込むと、自分を見ている人がいた。

 白い肌。

 まつげが、長く感じるのはマスカラのせいか。

 色づいた頬に、瞼の色。

 こんなに、しっかりメイクしてもらったのは、これが初めてだった。

 いや、一度だけあったけれども―― あの時のメイクとは、基本から何もかもが違っている。

 メイが、メイとしてそこにいるのだ。

 他の誰でもなく、自分のありのままを使った化粧である。

 でも、やぼったいカンジは全然なかった。

 眉まで、綺麗に整えられたせいか。

 驚きながら軽く目を見開くと、鏡の中の女性も同じようにした。

 間違いなく、そこにいるのは自分だった。

 いつもよりも、髪がくるくるで。

 式のリハーサルに行くというよりは、これからどこかのパーティにつれていかれるような気がする。

「はい、立って」

 肩のケープが取られ、満足げなハルコに促された。

 椅子から立ち上がるが、この部屋には全身を映す鏡はない。

 だから、あの黄緑のドレスの上にくっついた自分のこの顔、というのが全然想像できなかった。

「外は寒いから、ちゃんとコートを着てね…新婦さんにカゼをひかせては大変だわ」

 クローゼットから必要そうなものは、この客間の方に持ってきている。

 ハルコは、本当に気の利く人で、アクセサリまで持参してくれていた。

 ただ、コートだけは向こうの部屋に忘れてきていた。

 取ってこなければならない。

 嬉しい恥ずかしい気持ちが、胸の中でダンスを踊る。

 一番気がかりなのは、この顔や姿を見て、カイトがどんな風に思うだろうか、ということだった。
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