冬うらら2

「ちょっと待っててね、コートを取ってくるから」

 そうして二人を置いて、ハルコが部屋に入ってしまう。

 ソウマは、まだ部屋の中にいたが、何故かドアまで閉ざされてしまった。

 あっ。

 いきなり出来た、どう考えても不自然な二人きりという環境に、メイは戸惑ってしまった。

 まるで高校時代、二人をくっつけるために、無理矢理周囲が気を利かせたみたいな―― 人為的な状態。

 しかし、彼らは高校生ではないし。

 改めてくっつく必要もなかったのに。

 うまく顔を上げることが出来なくて、ただカイトのそばに立っているだけだった。

 でも、彼の視線は刺さるほど降ってきて。

 ついに、耐えられなくなってしまった。

「カッ、カイト…」

 勇気をこめて顎をあげる。

 そうしたら、彼の方が視線をそらしてしまった。

 余計に、言葉がしゃべれない空気ができあがってしまって、二人押し黙ったが、幸いメイには仕事が一つ残っていた。

 彼のネクタイだ。

 さっき途中まで結んであったのは、一体何だったのだろう。

 ちょっと疑問には思ったが、それでも、これだけは自分の仕事として取っておいて欲しかった。

 きれいにワイシャツの襟を整えて、ネクタイを結ぶ。

 ガチャ。

 静かに、部屋の扉が開く。

 二人きりが、終わりになったのだ。

 お待たせ、というような瞳で、ハルコがコートを渡してくれる。

 メイは、それに袖を通した。

 今度は、ソウマも出てきて。

 しかし、視線はカイトの方に注がれていた―― 何か言いたげな、少しうろんな瞳をしていたけれども、どういう翻訳をしていいのかは分からなかった。

「それじゃあ、私たちの車で行きましょうね」

 ハルコの言葉で、廊下の一団はようやく目的地に向かい始めた。
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