冬うらら2

 ぶっすー。

 カイトは、最初からもう、彼らと同席するつもりはなかった。

 思い切り不機嫌なオーラをまき散らしつつ、コンピュータの前に戻って『オレは仕事で忙しいんだ! とっとと帰れ!』と背中で怒鳴った。

 メイは、いまいない。

 何もしなくていいというのに、彼らのためにお茶の用意をしにいってしまったのだ。

 おかげで、この部屋に3人こっきりで取り残されてしまう。


 クソッ、クソッ、クソ!!!!


 汚い言葉で来訪者をののしる。

 結婚したばかりであることくらい、彼らも知っているはずなのだ。

 だから、ちったぁ遠慮しろ、というところだった。

「いやぁ…シュウがいてくれてよかった。カギがかかっていたから、開けてくれなかったら門前払いだったな」

「本当によかったわ。もう、私が元々持っていたカギは返してしまっていたから、入れなかったわねぇ」

 誰かさんたちは、聞こえなかったようだからな。

 無視しているというのに、勝手にソウマはしゃべり始める。

 独り言なら聞こえないように言え、というところなのだが、カイトに聞かせたい音量で言っているということも分かっていた。

 あんの…。

 階下にシュウがいたのは盲点だった。

 今日は日曜日。

 休日出勤しないという可能性を、すかっと忘れていたのだ。

 大体、メイと結婚してからは、あの副社長の存在のことなど、ほとんど思い出すこともなかった。

 滅多に、この家で顔を合わせることもないせいだ。

「おーい、カイト…今日はまじめな話できたんだから、ちゃんとこっちに座れー」

 不意打ちしておいて、要求の多い男だ。

 何か紙類をバサバサ言わせている音がする。

 まるで遠くにいる人間を呼ぶような声を、しかし、カイトは無視してキーボードを叩き続けた。
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