冬うらら2

 ただ。

 気になることが一つあった。

 メイだ。

 朝の落ち着かない様子を見ると、どうしても心配になってしまう。

 こうして、カイトが仕事している間に、何事か起きるのではないか、と。

 うぅ。

 背に腹は、代えられなかった。

 カイトは、非常にハラの立つことではあるが―― 彼女を、両親に預けたのだ。

 仕事が終わったら、迎えに来る、と。

 大丈夫だから、などと言おうとするメイだったが、最終的には彼の気迫に押されたのか、その件を飲み込んでくれた。

 ふぅ。

 しかし、多少は気が楽になったのは確かだ。

「社長…」

 苦笑して現れたのはチーフで。

 やれやれ、という表情を隠しきれない様子だった。

 ギロリと、睨み上げる。

 出社した件についての言及はするな、という暗黙の威嚇だった。

 ちゃんと理解しているらしく、彼は何も言うことなく、現在の進行状況の報告を始めた。

「万事、順調ですよ。けれど、ギリギリまで慎重にチェックする予定にしています」

 発売されてから、バグが見つかっては遅いので。

 周囲を見渡すような動きを見せたので、カイトもつられて顎を動かした。

 ヨレヨレの、背広を着ている人間もいる。

 会社に泊まりこんでいるのだ。

 こざっぱりした格好をしているのは、家が近くの人間だけ。

 あとは。

「ねぇねぇ、見てー!! ミニゲームで最高得点が出たのー! ほらほら!」

 相変わらず。

 カイトは、目を細めた。

 ハナは、健在だった。

「あっ、シャチョー!! 披露宴の招待状ください~~~~!!」

 そして―― まだあきらめていなかった。
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