冬うらら2

 慌てて、抱え起こす。

 それから。

 彼女は。

 森ではなく―― 玄関の方に向かったのだった。

 せめて、何か出来合いのものでも、買ってこようと思ったのだ。

 もう夜は遅いが、大通りのコンビニは開いている。

 こんな緊張したまま、ずっと家にいるのも耐えられなかった。

 何かしていれば気が紛れるのだが、またお皿を割るワケにもいかない。

 それに、まだ手よりも足の方が、ちゃんと動きそうだった。

 コートに袖を通してお財布を持って、彼女は玄関を開けた。

 途端、寒風がぶわっと吹き込んでくる。

 昨日よりも、もっと冷えた気がした。

 身震いを一つした後、メイはたたたっと駆け出した。

 大通りまでは、走れば5分くらい。

 別の意味での夜の森の中に、彼女は飛び込んだのである。

 しかし。

 やはり5分も走り続けることは出来なかった。

 元々、運動神経は真ん中より少し下のメイだ。

 おまけに、学校を卒業してから、これというスポーツをしていたワケでもなく。

 道半ばあたりから、ぽてぽてと歩き初めてしまった。

 外灯と外灯の間まで、少しある。

 その間だけ、小走りになった。

 明かりの真下に来ると、ほっとする。

 人や車とすれ違う時は、すごく怖い。

 どうして、自分がこんなに暗いところが苦手になったのかは、よく覚えていない。

 正確に言うと、暗いところがキライなのではなく、暗いところに一人で立っているのがキライなのだ。

 あとちょっとで大通り。

 大通りの、はっきりと明るい世界に向かって、メイは勇気を抱えて走ろうとした。

 この道に入ってきた、車のハイビームのライトで一瞬目がくらむ。
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